そよ風を受けてチリリンと、可愛い音色を奏でる風鈴。風鈴は、すごしにくい日本の夏を少しでもすごしやすいようにと、昔の人が考え出した夏の風物詩のひとつです。 暑い夏、ふと小道に入って風鈴の涼やかな音に耳を奪われたことはありませんか。 「あぁ、小さいときによくおばあちゃんの家の軒先にあったなぁ」と懐かしい思いがすることはありませんか。 風鈴の音はそよ風の音、風の声…ジージーと鳴く蝉の声とは対照的に、太陽の暑さや仕事の疲れを忘れさせてくれる存在です。 風鈴といえば、ガラスで出来た江戸風鈴や、東北地方ではおなじみの南部鉄器で出来た南部風鈴が有名ですが、全国を見渡すと色々な種類を見つけることが出来ます。 真鍮やアルミなどの金属を火箸状にして作られた「火箸風鈴」、鉄琴を細くして縦にたらしたような形でまるでインドネシアの民族楽器のような「エスニック風の風鈴」は余韻の長い、高音の音色です。 自然石で作られた風鈴は素朴な音色。実際、石は楽器が出来るほど、音域が広い自然物です。選んだ石によって鈴のような音色にも、風が扉をノックしたような音にも聞こえるでしょう。 また、備長炭で作った風鈴は金属音を奏で、陶磁器の風鈴はその音色もさることながら、色鮮やかで、気持ちを明るくしてくれます。 風鈴の歴史は古く、世界中に存在しています。中国では、竹林に下げて「風の向き」「音の鳴り方」で、物事の吉凶を占う道具として使われていたようで、【占風鐸(せんふうたく)】と言われていました。 それが仏教などとともに渡来し、日本ではお寺の四隅にかけられていたそうです。お寺などでよくみる風鐸がそれです。今では想像できませんが、昔は魔除けの道具としての朱色の風鈴が一般的でした。時代を経て、風鈴の鳴らす風の音が心地よいと感じ、夏のそよ風の存在を感じさせる物へと変化していったのですね。 クーラーもいいですが、いつもの部屋に自分の好きな風鈴を一つ吊るして、爽やかな風を呼び込んでみるのも涼やかな夏の過ごし方も知れません。
※ミニ知識より |